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【便利帖】木造住宅の耐震設計。誤解の多い一般論について。

最近お客様からのご質問が多い、木造住宅の耐震設計の一般ルールを解説します。結論を言えば、木造住宅の耐震設計においては様々な特例があり、科学的な根拠に従い設計されていない案件が圧倒的多数です。そして、客観的なチェックを免れる事も一部では可能。つまり設計者の良心を信じて下さいという「性善説」に基づいています。

 

木造2階建て住宅では、構造計算が免除されています。

建築基準法によれば、構造面での安全を科学的に検証することが義務付けられているのですが、特例として木造2階建て住宅ではこれが免除されています。(法20条4号、6条1項4号)

 

科学的な検証、つまり構造計算による検証をする代わりに、「政令で定める技術的基準に適合」していれば問題無いと見なされています。そこで定められた細かい技術的な基準に従って、木造住宅の耐震設計がなされています。この技術的基準を「仕様規定」といいます。

 

現在では、大半の木造2階建て住宅はこの仕様規定に従い設計されています。

 

仕様規定の中身

仕様規定はいわば、これくらいの仕様ならば、まあ大丈夫だろうという、経験則に則った安全確保の考え方です。その中身ですが、具体的に主な項目を挙げると、

 

・ 地震と強風による水平方向の外力に耐える壁の量と配置のルール(壁量計算、四分割法)
・ 基礎の仕様
・ 土台と基礎など接合部の緊結の仕様(N値計算)
・ 柱の太さや梁の欠きこみの仕様

 

などです。「ポイントとその参考レベルを教えます。これに従っていれば経験則からたぶん大丈夫ですよ。」という精神で法規制が整備されています。

 

国内全ての2階建て木造住宅に難易度の高い構造計算を義務付けると、技術者不足と価格競争力の両面から、対応できない会社が大量に発生するからでしょう。例えば自動車業界でこのような事がまかり通るなど想像できませんが、住宅業界ではまかり通っている訳です。不透明な大地震の発生に対する安全対策がないがしろにされている様な気がします。

 

安全な住宅を建てるための予備知識。
皆様におかれましては、「構造は当然きちんと計算されて安全性はチェックされている」というご認識のもとで住宅会社を選ばれていらっしゃるかと思います。実際はそうではなく、特に説明が無ければ、構造計算が省略されているという事実はご理解の上で、家づくりをスタートされることをお奨めします。

 

そして、確認申請において、構造の客観的なチェックをしていない「四号特例」を活用しているかどうかも確認された方がいいでしょう。

 

* 「四号特例」とは?
法を守った設計であると行政がチェックする確認申請書に、構造設計に関する部分を添付する義務はありません(法6条の3)。これを四号特例と呼んでいます。

 

これを活用している場合は、コストダウンを図るため耐震性が劣っている可能性が高いでしょう。

 

また、住宅業界には仕様規定における壁量計算を、構造計算であると勘違いしている人も大勢います。この違いさえ知らない場合は要注意です。

 

木造住宅に対する構造計算は、主に「許容応力度計算」という手法を用います。これは、想定する地震や強風により建物の柱や梁などに加わる力に対して、建物を構成する各部材が耐えられるかどうかを検証する手法です。

 

構造計算は専門的な技術を必要としますので、その分費用がかさみますが、これを依頼するという選択肢もあります。当社では、全てではありませんが構造計算をして安全性を検証する物件が多いです。

 

まとめ

木造2階建て住宅(四号建築物)は、さほど技術が無くても建てられる建築物です。だからこそ、作り手で差が出やすく、作り手のモラルに大きく依存します。法律の縛りがゆるい分、住宅会社それぞれの理念や価値観に左右されています。

 

これからご新居を建てられる皆様におかれましては、この事実を踏まえた上で、計画をスタートすることをお奨めしたいです。